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名古屋相続税相談所

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相続の豆知識
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遺産

【Q】寄せられた質問

私には息子が一人おり、すでに所帯を持っています。おかげさまで私と妻は孫に二人恵まれまています。
先般、息子の妻つまり義理の娘の父親から、「相続税対策の一環として、上の孫を自分の養子にしたい」との相談を受け、思わず面食らってしまいました。

もちろん、上の孫が義理の娘の父親の養子となったとしても私の孫でもあることには変わりませんし、上の孫はまだ小学生で自分では判断が付かないでしょうから、息子夫婦さえ良ければ特に異論を述べる気はありません。これは妻も同じ意見です。

ただ、その際に義理の娘の父親が「孫と養子縁組することが相続税の節税対策になる」と言っていたことが気になります。もしそうであれば、私は下の孫と養子縁組を考えてみたいと思います。ただ、私はそもそも養子縁組の制度についてよく知りません。孫との養子縁組が節税対策になる背景とあわせて教えてください。

【A】回答

養子縁組とは

まず、養子縁組の概要についてご説明します。
養子縁組とは、戸籍法などに定められた手続きを踏むことで血縁関係の無い子どもと擬似的かつ法的に親子関係を生じさせることをいいます。

養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組がありますが、後者は子どもの監護者としてあまりに不適当と認められる親から子供を救うために設けられている特殊な制度でありご相談者様の件には当てはまらないと考えますので、以下では前者の普通養子縁組についてご説明します。

ご相談者様が未成年者であるお孫様と養子縁組する場合は、原則としてご相談者様がお住まいの地域を管轄する家庭裁判所の許可が必要です。

さらに、15歳未満の未成年者と養子縁組する場合はその未成年者の法定代理人を設けなければなりません。ご相談者様の場合であれば、息子様か義理の娘様がお孫様の法定代理人なることが可能です。

なお、お孫様はご相談者様と普通養子縁組した後も、お孫様のご両親つまり息子様・義理の娘様との戸籍上の親子関係は継続します。

普通養子縁組であれば、子どもと実の親は法的にいつまでも親子関係なのです。

したがって、お孫様はご相談者様と養子縁組した後も、息子様・義理の娘様の相続人となることが可能です。

ただし、民法第818条第2項の規定により、未成年者であるお孫様はご相談者様と養子縁組すると、息子様・義理の娘様の親権は無くなります。

(親権者)

第八百十八条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

お孫様は養親つまりご相談者様の親権に服することになるのです。

したがって、お孫様と養子縁組した場合の親権者は息子様・義理の娘様がご存命でもご相談者様となります。

続いて、お孫様と養子縁組するうえで知って頂きたい相続の概要についてご説明します。

民法の規定において法定相続人と認められるのは、血の繋がりがある直系の家族すなわち「血族」です。

息子様とお孫様はともにご相談者様の血族ですが、現行の相続税法では養子縁組をしていない限りお孫様の相続順位は息子様に劣後します。

しかし、ご相談者様がお孫様と養子縁組することにより、お孫様は息子様と同じように第一順位の相続人となり息子様と同じ法定相続割合が認められることになります。

ご質問文を拝見する限り、ご相談者様の法定相続人は奥様と息子様のようですが、その場合の法定相続割合は奥様と息子様がそれぞれ2分の1ずつとなり、お孫様には法定相続割合がありません(ただし、万一ご相談者様の生前に息子様が亡くなった場合は、お孫様は息子様の代襲相続人となり息子様が相続するはずだった分を相続することになります)。

これに対してお孫様と養子縁組した場合の法定相続割合は、奥様が2分の1・息子様とお孫様がそれぞれ4分の1ずつとなり、ご相談者様が亡くなった後お孫様は直ちに財産を相続する権利が発生するのです(この場合、仮にご相談者様の生前に息子様が亡くなるとお孫様は自身の法定相続分に加え息子様の分も代襲相続するため、2分の1を相続することになります)。

養子縁組によるメリット

それでは、養子縁組により生じる節税メリットについてご説明します。
これらのメリットは仮にご相談者様が先に亡くなられ、その後に奥様が亡くなられた際に発生する「二次相続」でも同様に活かすことが可能です。

(1)基礎控除枠の増加

相続税法では、亡くなった人が遺した相続財産のうち一定の金額までは相続税を支払わなくて良いと定めています。この一定の金額を「基礎控除」といいます。

基礎控除額は「3,000万円+法定相続人の数×600万円」で計算され、ご相談者様の相続財産評価額が基礎控除額に収まっていれば相続税は発生しないのです。

そして養子縁組することは、ご相談者様の法定相続人が一人増えることを意味します。

すなわち、ご相談者様がお孫様と養子縁組することで基礎控除額、つまり相続税が課税されない相続財産が600万円分も増え、その分節税できるのです。

(2)生命保険の非課税枠の増加

養子縁組による節税メリットは、ご相談者様を契約者・相続人を受取人とする生命保険を活用することで一層大きくなります。

ご相談者様が亡くなったことにより、みなし相続財産として相続人が受け取る生命保険金に対する非課税枠は、「法定相続人の数×500万円」とされています。

つまり基礎控除額の計算と同様の考え方で、相続税が課税されない相続財産が500万円分増えるのです。お孫様と養子縁組することで、ご相談者様の相続財産額は基礎控除額と生命保険の活用により1,100万円分の評価減となり、その分節税できることになります。

(3)相続過程を1回分省略

ご相談者様が亡くなった後お孫様が財産をそのまま相続することは、財産を息子様がご相談者様から相続して息子様が亡くなった後にお孫様が相続するという過程を省略できるわけですから、お孫様は相続税の支払いを1回分減らすことになります。

つまり、ご相談者様の財産が多ければ多いほど、お孫様と養子縁組しておくことによって大きな節税効果の恩恵を受けることが可能になるのです。

(4)未成年者控除

あまり考えるべき話ではありませんが、養子縁組した後お孫様が成年に達する前にご相談者様が亡くなるということも想定されます。この場合、お孫様に課される相続税については一定の条件の下に未成年者控除の適用を受けることができます。

未成年者控除とは、未成年者が相続人となった場合に成人に達するまでの生活費・教育費に対しての配慮から、その相続人の相続税額から「10万円×相続人が20歳に達するまでの年数」で算出された金額を控除することを認める制度です。

なお、1年未満については切り上げて1年として計算します。また、未成年者控除については民法第753条(結婚したものは20歳未満でも成年として看做す)の規定は適用されません。

したがって、お孫様が20歳未満で結婚して相続が発生したとしても未成年者控除は適用されます。

注意点

注意して頂きたい点は、以下の通りです。

(1)養子縁組できる人数には制限がある

相続税の節税目的のために行き過ぎた数の養子縁組を防ぐことを目的に、相続税法により法定相続人の数に含めることができる養子の数について規制が設けられています。

具体的には、亡くなった方に実子がいる場合は法定相続人になることができる養子は1人まで、実子がいない場合は法定相続人になることができる養子は2人までです。

このため、さらなる節税効果を得ることを目的に、例えばお孫様に加えて義理の娘様と養子縁組したとしても上記の人数を超えた分の控除等は認められず、節税効果は出ません。

ご相談者様の義理の娘様のお父様が、2人いるお孫様のうち1名と養子縁組したいとおっしゃっているのは、すでに義理の娘様という実子がいるため相続税法上1名までしか養子縁組できないからです。

なお、この養子縁組の人数制限はあくまで相続税を課税するに際して適用されるものであり、民法上は養子の数に関する制限規定は設けられていません。

(2)相続税の2割加算がある

養子縁組によりお孫様を法定相続人とした場合、ご相談者様が亡くなった後にお孫様に対して課される相続税は、「2割加算」の対象となります。

文字通り、これは相続税額にその2割相当額が加算されてしまうということです。つまり、基礎控除額や生命保険の非課税額を増やしたり息子様からの相続を省略して節税したとしても、この2割加算の適用により相殺されてしまうことも有り得るのです。

したがって、お孫様と養子縁組する前にご相談者様の財産状況等を勘案した上でどちらが相続税上のメリットがあるか、税理士のような専門家と相談しながらしっかりとシミュレーションしておくことをお勧めします。

(3)家庭裁判所にはしっかり説明する

先述の通り、未成年者であるお孫様を養子とするためには家庭裁判所の許可が必要です。そして養子縁組を申請する際は、家庭裁判所から必ずその理由を訊かれます。

その際、単純に「節税したいから」などと回答することは控えるべきです。家庭裁判所は基本的に大人の都合で子どもの籍を動かすことに対して否定的なスタンスであり、祖父母との養子縁組についても例外ではありません。

したがって、養子縁組する目的について節税を前面に出すと目的の不純性やお孫様と息子様夫婦の関係などを理由に、申請が却下されてしまう可能性があります。

だからこそ申請時は家庭裁判所に対して、「将来、先祖代々の土地とお墓の管理を任せることになる孫に、少しでも多く自分の財産を遺してあげたい」などと、合理的な理由をしっかりと説明することが重要なのです。

最後に

以上、お孫様を養子にすることのメリットおよび注意点についてご説明致しました。
平成29年1月、「節税目的のために孫と養子縁組したとしても、それがただちに無効にはならない」旨の最高裁判決がありました。

しかし、司法や徴税の面では、親が健在であるにも拘らず孫と養子縁組することについて引き続き奨励するものではないことをご留意ください。何よりも、お孫様や息子様夫婦の心情にも配慮してお孫様との養子縁組をご検討ください。

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