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あまり考えたくはない話ではありますが、例えばお父さんやお母さんが亡くなった場合、それぞれが持っていた遺産を相続することになるかと思います。
その際、相続した遺産の金額にもよりますが、最大で55%(細かい算式は考慮に入れてません。)もの相続税というものが課されることになります。
遺産総額が5億円だとすると実に2億7,500万円、つまり、半分以上を相続税として国に支払わなければなりません。
息子や娘のためにコツコツ働いて貯めたお金が最大で半分以上、相続税として国に納める義務が生ずるのです。
法律で決まっていることなのでそれは仕方のないことだ、とお考えの方のいらっしゃると思うのですが、遺産総額が多ければ多い人ほど、いろいろな節税方法を試しているのです。
それでは今回は、相続税の生前対策をいくつかご紹介致します。
暦年贈与
暦年贈与とは、毎年、贈与を行い、その贈与額が年間110万円を超えると金額によって異なりますが贈与税が課されるものです。
皆様が一般的にイメージされる贈与はこの暦年贈与のことが多いと思います。
ちなみに、この110万円というのは、贈与を受ける者(以下、「受贈者」と言います。)単位でのことを言い、子が父から100万円を贈与された場合、他の者からは10万円超の贈与を受けると贈与税が課されることになります。
この暦年贈与での贈与税は税率表に沿って、その年中の贈与税を計算し、納付することとなるのですが、一般的に、この税率は相続税の税率よりも若干高めに設定されていますので、注意が必要になります。
では、具体的に暦年贈与はどのようにすればよいのか解説していきたいと思います。
贈与契約書の作成
なぜ作成するのか、というと「いつ」「だれからだれに」「いくら」贈与したということの客観的な証拠を残しておくためです。
また、贈与というのはあげる側(贈与者)ともらう側(受贈者)、双方の了承が必要なものであるため、この贈与契約書には双方の自署・押印が必要になります。
贈与物の受け渡しを行う
現金でも構わないのですが、通帳に記録が残る預金送金の方がベターではないかと思います。
この際、預金通帳に記載される送金日と贈与契約書の日付を同一にしておきましょう。
贈与税申告
贈与した金額が110万円以上になるのであれば贈与税の申告・納付が必要になります。
申告期限は贈与をされた翌年の2月1日から3月15日までとなっています。
ほとんどの期間が個人の確定申告の申告期間と被っていますので3月以降は税務署が込み合うことも予想されます。
確定申告に比べると用意する書類や必要な処理も格段に少ないので早目に行って終わらせるのが良いでしょう。
以上が暦年贈与の簡単な流れになります。
なお、相続開始前3年以内に行った贈与については、相続財産に加算されることになるので注意が必要です。
つづいては相続時精算課税制度を利用した贈与をご紹介致します。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、適用を開始した年から相続開始までの間に2,500万円を限度として贈与税の支払いを免除し、相続財産に加算、そしてその相続時に課税する、という制度です。
上記でも紹介した暦年贈与ですと、不動産等の大きい財産を贈与する場合、贈与税の負担も大きくなってしまいます。
よって、そういった財産を贈与する場合には、この相続時精算課税制度を適用するのが良いでしょう。
例えば、毎年300万円の家賃収入を生み出す賃貸アパートを被相続人が20年間、所有していたとします。
相続時点での課税価格は単純に計算すると毎年の家賃300万円×20年=6,000万円+賃貸アパートの不動産としての評価額となります。
では、仮に相続開始の10年前に、この相続時精算課税制度を利用して、この賃貸アパートを子に贈与したとします。
すると相続時点での課税価格は家賃収入の300万円×10年=3,000万円+賃貸アパートの不動産としての評価額となり、3,000万円の節税効果が見込まれることになります。
こういった賃貸アパート等の収益を生み出す財産については、相続時精算課税制度を利用して贈与をすると大きな節税効果が見込めます。
ここまでは相続時精算課税制度のメリットを説明しましたが、続いてはデメリットを説明していきたいと思います。
相続時精算課税制度のデメリットは、一度、相続時精算課税制度を適用すると撤回することができないというものです。
相続時精算課税制度を適用し限度の2,500万円を超えると超えた金額×20%の贈与税を払う必要が生じるのですが、だからといって途中で暦年贈与に戻す、ということはできない制度になります。
以上を踏まえて、暦年贈与と比較をし、自分には損か得かを考えてから適用をする必要があります。
では、続いて相続時精算課税制度の適用方法を説明致します。
基本的には暦年贈与の際と同様に、贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日までに申告を行うことになるのですが、若干の相違点がございます。
適用要件
誰でも相続時精算課税制度を適用できるのか、というと、そうではありません。
受贈者・贈与者それぞれに要件があります。
受贈者
・贈与者の直系卑属(息子や孫等)である推定相続人(相続があった場合に法定相続人になりえる人)であること、又は贈与者の孫であること
・贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること
贈与者
・贈与をする年の1月1日において60歳以上であること
以上になります。
上記を満たす場合に初めて相続時精算課税制度を適用できる権利を有することになります。
申告要件
暦年贈与の場合だと110万円以下の場合、申告は不要です。
しかし、相続時精算課税制度を適用する場合には、例え、納付する贈与税がない場合においても贈与税の申告書を提出する必要が生じてきます。
また、申告書の提出の際に、相続時精算課税選択適用書を添付する必要があります。
暦年贈与の申告とは異なるので注意が必要です。
通常、相続時精算課税制度の適用を考える方は贈与する財産の金額も暦年贈与よりも過大になるのではないかと思います。
税理士事務所等の専門家に一度、相談をして、可能であれば申告等の手続も全て依頼するのが良いでしょう。
ここまでは誰でも受けられる、といったら語弊がありますが、比較的贈与しやすい、又は適用を受けやすい規定をご紹介致しました。
次からは、その節税効果が大きい一方、適用を受けるための要件や、場合によっては、その贈与を受けた金銭の使途まで制限されてしまう規定をご紹介致します。
住宅取得資金贈与の特例
この規定は親や祖父母などの直系尊属からの贈与により、自分のための住宅用の家屋の新築又は増改築に充てるために金銭を贈与された場合に、その住宅の取得日に応じて、最大で1,000万円(省エネ等住宅の場合は最大1,500万円)までの金額を贈与税の非課税とするものになります。
なお、注意点としては、例えば、「配偶者の親からの金銭の贈与」「親などからの家そのもの贈与」「すでに取得済みである住宅の住宅ローンの支払いに充てるための金銭の贈与」には適用されない、ということです。
また、この規定にも適用要件がありますので簡単に解説していきたいと思います。
適用要件
・金銭等の受贈者が、その贈与を受けた年の1月1日において20歳以上であること
・その受贈者の年間所得金額が2,000万円以下であること
非課税限度額
この規定はいつ贈与をしたかによって非課税となる金額が異なるものになります。
平成30年1月1日以降に範囲を限定してそれを説明致します。
通常の場合 | |
---|---|
平成30年1月1日から平成32年3月31日 | 700万円 |
平成32年4月1日から平成33年3月31日 | 500万円 |
平成33年4月1日から平成33年12月31日 | 300万円 |
省エネ等住宅(省エネ等住宅の詳しい説明については省きます)の場合
期間については、上記の通常の場合と同様で金額がそれぞれ1,200万円、1,000万円、800万円と推移していきます。
また、現時点では平成31年10月1日からの施行が予定されている消費税率10%が適用される家屋については非課税額が若干異なることとなるのでそちらも説明致します。
通常 | 省エネ等 | |
---|---|---|
平成31年4月1日から平成32年3月31日 | 2,500万円 | 3,000万円 |
平成32年4月1日から平成33年3月31日 | 1,000万円 | 1,500万円 |
平成33年4月1日から平成33年12月31日 | 700万円 | 1,200万円 |
余談ではありますが、住宅などの請負契約により購入するものについては、その引き渡し日(購入日)が増税後(今回の場合は平成31年10月1日以後)であっても、その契約を増税前6月前の日まで(今回の場合は平成31年3月31日まで)に行えば、引き渡し日が増税後であっても税率は8%が適用されます。
利用を考えている方は、上記の消費税との絡みも含めて検討してみて下さい。
教育資金の一括贈与
この規定は親や祖父母から教育資金の一括贈与を受けた場合、1,500万円まで非課税となるものです。
ただし、これまでに説明した規定とは異なり、その贈与を受けた金額を金融機関等に預入れをする必要があります。
簡単に概要を説明しましたが、続いては適用要件等を説明していきたいと思います。
適用要件・対象
・贈与者・・・受贈者の直系尊属
・受贈者・・・その年の1月1日に30歳未満の子や孫
・適用方法・・・金融機関に受贈者の名義で口座の開設を行い、贈与者から受贈者に対して一括で贈与し(分割の場合は適用されません)、その全額をその口座に預け入れること
・教育資金の範囲・・・学校等に支払われる入学金や授業料など
学校等以外(塾など)に支払われる金銭のうち一定のもの
・非課税限度・・・1,500万円(学校等以外に支払う場合は500万円)
対象となる教育資金
一口に教育資金といってもその範囲は個々人によって異なるものだと思います。
ご自身は教育のための資金だ、と思っていても、定められた定義に当てはまらなければ非課税となりません。
では対象となるのはどのようなものか?簡単に説明致します。
まず、学校等に支払うものとしては、入学金や授業料、検定料、修学旅行の旅費などが該当します。
学校以外(塾など)に支払うものとしては月々の月謝などが含まれることになります。
また、対象にならないものとして具体例を挙げると、部活動に必要な道具(野球部であればバットやグローブ)の費用など教育費用として認められそうなものも対象外となっています。
この規定について施行が平成25年4月1日であり、比較的新しいものになります。
銀行への口座開設が必要であったり手続き面でも少しややこしいものとなっていますので、活用される際は専門機関等に確認をすると良いでしょう。
その他・まとめ
そのほかにも結婚・子育て費用の贈与税の非課税制度や障碍者への贈与の非課税など、贈与税の非課税規定は種々存在します。
中には期限のある時限立法も存在しますので少しでも興味があるのであれば早目にお近くの税理士事務所等に相談することをオススメします。
相続対策を何も考えずにいる、というのは払わなくてよかった税金をみすみす払ってしまうことになってしまいます。
国税庁のHPでは相続税の試算をすることもできます。
まずは、相続税というものは意外と身近なものなんだという認識をもって頂ければと思います。
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