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相続の豆知識
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遺産

教育資金の一括贈与の概要

教育資金として子供や孫に現金等を贈与した場合には、贈与を受けた子供や孫に対して贈与税が課されます。

贈与税は、贈与により財産を取得した方がその取得した財産の価額に応じて、下記の計算式により計算した贈与税額を納めます。

贈与税の計算に使用する財産の価額とは、国税庁の公表している財産評価基本通達により評価した相続税評価額を用いることとされています。これは、贈与税が相続税を補完する補完税としての立場をとっているためです。

【計算式】

(受け取った財産の相続税評価額-基礎控除額1,100,000円)×税率

ただし、贈与税には非課税という制度があります。

贈与税は、原則として贈与を受けたすべての財産に対してかかりますが、その財産の性質や贈与の目的などからみて、一定の財産については贈与税がかからないことになっています。

贈与税が非課税とされる一定財産の中には、「扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」があります。ここでいう教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られますので、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てているなど、生活費や教育費に充てていない場合には贈与税がかかることになります。

つまり、必要な都度必要な額を贈与し、もれなく教育の目的通りに利用されていなければ、この規定による贈与税の非課税を使うことはできません。

表題の「教育資金を一括贈与した場合の贈与税の非課税」とは、こうした教育資金を必要な都度必要な額を贈与する方法によらず、まとまった額を一時に贈与する、本来であれば贈与税の課税対象となってしまう贈与について、別の規程から贈与税を非課税とする制度です。

制度の内容

平成31年(2019年)3月31日までの間に、個人(教育資金管理契約を締結する日において30歳未満の者に限ります。)が、教育資金に充てるため、下記に掲げる信託し、預金若しくは貯金の預入れ又は有価証券を購入した場合には、その信託受益権、金銭又は金銭等の価額のうち1,500万円までの金額(既にこの「教育資金の非課税の特例」の適用を受けて贈与税の課税価格に算入しなかった金額がある場合には、その算入しなかった金額を控除した残額)に相当する部分の価額については、贈与税の課税価格に算入しません。

①その直系尊属と信託会社との間の教育資金管理契約に基づき信託の受益権を取得した場合

②その直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭を教育資金管理契約に基づき銀行等の営業所等において預金若しくは貯金として預入をした場合

③教育資金管理契約に基づきその直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭等で証券会社の営業所等において有価証券を購入した場合

基本的に、贈与については書面によることが求められます。民法上は贈与契約は口頭でも成立するとされていますが、本規定は書面によることが求められています。

受贈者と金融機関との間に教育資金管理契約を締結することが求められます。また、預金等の他に信託を利用する方法や、証券会社のMMFやMRFなどを利用することも認められています。

導入手続き

例えば銀行に口座を設ける方法で本規定の適用を受ける場合、お好みの金融機関にて教育資金非課税口座を開設することになります。

まずは、教育資金非課税口座を開設する金融機関を選定することになりますが、教育資金非課税口座は、一個人(受贈者)につき一金融機関かつ一営業所(一支店・一出張所)でのみでしか開設することができません。

既に他の金融機関や同じ金融機関の他支店・出張所で本規定の適用を受けるための口座を開設している場合には、改めて教育資金非課税口座を開設することはできません。

金融機関の多くは、専用の普通預金口座を開設することとなり、大手都市銀行やネット系銀行などの場合、インターネットバンキングで残高が確認できたり、後述の教育資金の領収書をスマートホンのアプリケーションを使って送信することも可能となっていたり、窓口に足を運ばなくとも運用可能なサービスも多くあります。

預金の場合、預金保険の対象となります。都市銀行や地方銀行に信用金庫などほとんどの金融機関で取り扱いがありますので、企業オーナーならお付き合いされている金融機関に相談するのも良いと思います。

非課税枠をすべて使うと1,500万円になりますので、金融機関選びは慎重されることをおすすめします。

それからロケーションについても注意する点があります。祖父母が地方在住で子や孫が東京に住んでいる場合などで、昔からお世話になっている地方銀行で教育資金非課税口座を開設した場合、教育費の領収書を提出する場合にわざわざ窓口まで行かなければならなくなると非常に手間なケースもあります。

この辺りは金融機関によってサービスは様々ですから、複数の金融機関に問い合わせて比較検討されることをお勧め致します。

利用する金融機関を決めたら、子や孫等の受贈者が、教育資金非課税申告書をその教育資金非課税申告書に記載した取扱金融機関の営業所等を経由して、信託がされる日、預金若しくは貯金の預入をする日又は有価証券を購入する日(以下「預入等期限」といいます。)までに、その受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

なお、教育資金非課税申告書が取扱金融機関の営業所に受理された場合には、その受理された日にその受贈者の納税地の所轄税務署長に提出されたものとみなされます。取扱い金融機関を経由することとされているため、わざわざ税務署に行って手続きする必要はありません。

参考ですが、日本の個人金融資産は約1800兆円あると言われています。そのうち現預金の占める比率が51.5%に達します。

930兆円ものお金が現金や預金として存在し、そのうちの約43兆円がタンス預金と言われているそうです。(第一生命経済研究所の調べ)つまり、日本中の現預金の総額の5%程度は、タンス(実際には、金庫や仏壇、冷蔵庫や畳の下など様々なところにあると言われていますが)にあります。

本制度制定時に金融機関を必ず間に挟むこととされたのは、こういったタンス預金を金融機関に集め、経済市場や投資市場に資金が流通するようにしたいという政府の思惑もあったようです。

とはいえ、タンス預金は災害リスクや盗難リスクが高く、本規定の利用の有無を問わず、金融機関に預け入れておく方が良いと筆者は考えております。(もちろん、預金封鎖などが起きるリスクもあろうかと思いますので、100%安全とは言い切れませんが)

教育費の払い出し

実際に教育資金の支払がある場合またはあった場合には、その支払いに充てた金銭に係る領収書等を、受贈者が選択した方法ごとに定められた次の(1)又は(2)(一度選択すると、その後の変更は認められません。)の提出期限までに、取扱金融機関の営業所等に提出等しなければなりません。

(1) 教育資金を支払った後にその実際に支払った金額を口座から払い出す方法のみをその口座からの払出方法として選択した場合には、領収書等の支払年月日から1年を経過する日まで

(2) (1)以外の方法を教育資金管理契約に係る口座の払出方法として選択した場合には、領収書等に記載された支払年月日の属する年の翌年3月15日(つまり贈与税や所得税の確定申告時期と同じです。)

ただし、年の途中で受贈者が30歳に達する場合など上記期限よりも早く教育資金管理契約が終了してしまう場合には、終了する日の翌月末日までに領収書等を金融機関に提供等する必要があります。

教育資金の範囲

非課税額が1500万円までとされる教育費

学校等に対して直接支払われるものとして下記のような支払が対象となります。

  • 入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費又は入学試験の検定料など
  • 学用品費、修学旅行費、学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用など

学校等とは学校教育法上の学校で、幼稚園、小・中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校、大学、大学院、専修学校、各種学校の他、外国の教育施設も対象となります。

外国の学校は、例えばその国の学校教育制度に位置づけられている学校、日本人学校、私立在外教育施設です。その他インターナショナルスクールや外国人学校、外国大学の日本校など、概ね一般的に学校と捉えられているものはすべて対象となります。

また、保育員などの他に認定こども園又は保育所なども対象となります。こういった学校に入校するための費用や在学中に発生する関連費用についても対象とされています。

参考ですが、幼稚園から大学までの19年間にかかる教育費はすべて公立学校に進学するケースで約1,000万円程度かかります。

またすべて公立だったとしても理系の大学に進む場合には1,500万円ほど発生します。私立に進学する場合には、理系の大学なら、約2,500万円かかりますので、子や孫の進路に次第ではかなら高額な教育資金が必要となります。

非課税額が500万円までとされる教育費

学校等以外に対して支払われる次のような支払が対象となります。

  • 学習塾や水泳教室などに直接支払われるもの
  • スポーツ(水泳、野球など)又は文化芸術に関する活動(ピアノ、絵画など)その他教養の向上のための活動に係る指導への対価など
  • 習い事に使用する物品の購入に要する費用(楽器や用具など)
  • 習い事に通うための通学定期券代
  • 留学渡航費、学校等に入学・転入学・編入学するために必要となった転居の際の交通費

つまり学校以外の習い事やお稽古事が対象となります。留学費用なども対象となるのは嬉しいですね。

教育資金管理契約の終了

次のイ又はロの事由に該当したことにより教育資金管理契約が終了した場合において、その教育資金管理契約に係る非課税拠出額(最大1500万円)から教育資金支出額(学校等以外の教育費ついては500万円を限度とします。教育資金支出額の確認は取扱金融機関が行います。)を控除した残額があるときは、その残額については、受贈者が30歳に達した日または契約が終了した日の属する年の贈与税の課税価格に算入されます。

イ 受贈者が30歳に達したこと
ロ 教育資金管理契約に係る口座残高が0円になったこと等で、また更新手続きなどもされない場合

本規定の利用について

本規定は、多額に必要となる教育資金の準備に非常に有効的です。

また相続対策としても非常に有効です。直系尊属の所有している財産が主に金融資産の場合には、不動産などと異なりほぼ額面通りの相続税課税となります。

従って、1,500万円もの現預金を無税で下の代に移転できることは大きなメリットです。

しかし、この制度は拠出してしまうと基本的には教育費としてしか利用できなくなってしまいますので、資金繰りを考えると、急に現金を用立てしなければならないケースもあると思いますので、計画的かつ慎重に採用すべきです。

今後の教育費無償化で、先ほど述べた教育費の総額は減少する傾向にあると思います。本来ては2019年3月31日までの時限立法とされていますので、今の制度が廃止となるか改組・継続となるはわかりませんが、利用を検討している方は早急に見極めが必要となってまいります。

現段階においては、年金収入等があり比較的資金に余裕がある場合には、利用を考えてみても良いかもしれません。

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