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平成30年1月1日より、面積が広い宅地の評価について、改正法適用がスタートしました。規模が大きすぎる土地の売却や運用は非常難しいと言われています。
保有していれば多額の固定資産税が発生し、売却しようとしても思ったように売れないことも多く、その土地に建物を建築し運用しようとしても、広すぎるために建築基準法や都市計画法等の各種法令等の制限を多く受けることとなり効率良く土地を活用することができないことが多いと言われています。
例えば、1,000㎡の土地があるとすると、通常の戸建て建物を建築しようと思った場合に1戸あたりおよそ250㎡として目一杯建築すると、単純計算で4戸建築できることになります。
しかし、実際には建築基準法や都市計画法など各種法令や条例の制限をうけるため、1,000㎡の土地すべてに建物を建築できるわけではなく、建物が建てられない、いわゆる潰れ地が発生してしまいます。
また土地を売却しようとした場合にも、規模が大きい土地は購入者も個人ではなく宅地開発をする業者になることが多く、広すぎて売却できないという機会損失も多く発生してしまいます。
このような事情から、税法上も面積が広い土地について、通常の土地よりも活用しにくい事実を評価に反映させるために減額しようとの趣旨から、広大地評価の規定が存在していました。
広大地評価の規定は、課税時期(死亡や贈与が発生した日)が平成29年12月31日までの場合に適用されます。広大地評価の規定は土地の大きさに比例して減額幅を大きくし、最大65%まで減額できるという非常に税圧縮効果の高い規定でした。
しかし適用可否の判定が難しく、税法の専門家である税理士でもその判断は非常に難しいものでした。広大地評価を否認され修正申告となるケースや、逆に適用できるのにも関わらず適用せずに相続税申告を提出し、更正の請求をするといったケースが多発しているのが現状でした。(広大地評価の更正請求は調査リスクが非常に高いと言われています。)
今回は、そんな面積の広い土地に適用できる地積規模の大きな宅地の評価方法を確認し、改正前の広大地評価の規定との違いについて比較検討していきたいと思います。
広大地評価の規定とその問題点(課税時期が平成29年12月31日まで)
現行の地積規模の大きな宅地の評価について述べる前に、改正前の広大地評価について少し触れておきます。
広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、都市計画法第4条第12項に規定する主に建築物の建築又は特定工作物の建築の用に供する目的で行う土地の区画形質変更を行う場合に公共公益的施設用地(道路や学校、医療施設等のことです。)の負担が必要と認められるものをいい、大規模工場用地(一団の工場用地の地積が5万㎡以上のものです。ご自身の所有されている土地が一団の土地の一部に該当する場合も大規模工場用地に該当します。また用途地域だけでなく、周辺の工場に有無や道路ICがあるかなども判定に考慮されます。)に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地(いわゆるマンション適地です。)に適しているものを除くと定義されています。
つまり広大か否かは、都市部か郊外か、その土地周辺の建築物や道路事情などの地域的事情を考慮し、開発許可が必要とされる1,000㎡以上(三大都市圏の一定の市街地の場合には、500㎡以上)である宅地で、建築物等を建築するための宅地開発をする場合に、道路などの建物以外の工作物を設置するために宅地を利用する必要があることから、そのすべてを活用できない宅地のことです。
大規模工場用地やマンション適地である場合には潰れ地は発生しませんので、税法上の広大地にはあたりません。工場用地やマンション適地がどうかは、容積率や用途地域や実際のその地域周辺の土地使用状況やマンション需要などを総合的に勘案して判定されます。
広大地評価の判定は非常にグレーな部分が多く、その宅地がマンション適地であるか、宅地開発をする場合に公共公益的施設が必要であるかなど、宅地毎に個別具体的に判断していかなければならず手間と時間がかかるため、以前から問題視されていました。
広大地の評価
その地域が路線価地域の場合
相続税評価額=路線価(複数路線に接している場合には最も高い路線価)×広大地補正率(端数処理不要)×地積㎡
広大地補正率(最低0.35)
0.6-0.05×地積㎡÷1,000
その地域が倍率地域の場合
その広大地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡あたりの価額を、その地域が路線価地域の場合の評価算式に当てはめて算定します。
市区町村の固定資産税評価額を算出するための路線価などを参考にします。ただし、通常の倍率方式による評価額の方が低くなる場合には、通常の倍率方式によることも可能です。
広大地評価の問題点
上記評価には土地の個性(間口狭小、奥行長大といった形状の個性)による評価減は反映されません。
すでに40%相当を減額した状態から補正率を算定するためだと考えられますが、他の宅地が形状の個性や存する場所に適用される法令等を勘案して評価されるのに対して、地積に比例して一律に40%以上減額するという簡単な評価方法であることから問題があるとされてきました。
また広大地評価の対象地判定そのものも非常にグレーな部分が多く、その宅地がマンション適地であるか、宅地開発をする場合に公共公益的施設が必要であるかなど、宅地毎に個別具体的に判断していかなければならず手間と時間がかかるため、以前から問題視されていました。
上記のような、対象地判定の分かりにくさや土地の個性が評価に反映されない問題点に対応するために、対象となる宅地の要件を明確にし、各土地の個性(形状や地積)に基づき評価する方法に改められたのです。
地積規模の大きな宅地の評価(平成30年1月1日以降)
改正法は、広大地評価の曖昧な判定基準の明確化や評価上の問題点を解消するために、奥行価格補正率や不整形地補正率といった各種画地補正率が適用されることとなりました。しかし、本改正は従来の広大地評価に比べて評価減額が少なくなる方が多く、実質的には増税という形になります。
対象となる地積規模大きな宅地とは
地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏においては地積が500㎡以上の宅地で、それ以外は地積が1,000㎡以上の宅地が該当することとされています。
ただし、路線価地域においては普通商用・併用住宅地区及び普通住宅地区が該当します。倍率地域においては、地積のみで判定します。
ただし、市街化調整区域に所在する宅地、用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地、指定容積率が400%以上(東京23区の場合には300%以上)の地域に所在する宅地、大規模工場用地に該当する宅地は除かれます。
三大都市圏とは、次の地域をいいます。
(1) 東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県に所在する一部の市街化区域に所在する宅地(首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地又は同条第4項に規定する近郊整備地帯)
(2) 大阪府、京都府、兵庫県、奈良県に所在する一部の市街化区域に所在する宅地(近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域又は同条第4項に規定する近郊整備区域)
(3) 愛知県、三重県の一部に所在する市街化区域(中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域)
評価方法
路線価地域(普通住宅地区、普通商業・住宅併用地区)に所在する場合
相続税評価額=路線価×奥行価格補正率×各種画地補正率×規模格差補正率(※)×地積㎡
※規模格差補正率=(地積㎡×B+C)÷地積㎡×0.8
三大都市圏の場合
B:地積規模に応じて0.95~0.80を適用
C:地積規模に応じて25~475を適用
三大都市圏以外の場合
B:地積規模に応じて0.90~0.80を適用
C:地積規模に応じて100~500を適用
倍率地域に所在する場合
その宅地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡あたりの価額に、普通住宅地区の各種画地補正率を適用した上で路線価地域に所在する場合の計算式に準じて算定します。
路線価は市区町村の固定資産税評価額を算出するための路線価などを参考にします。なお、通常の倍率方式により算定した金額の方が評価額が低くなる場合には、通常の倍率方式によることも可能です。
旧広大地評価と地積規模の大きな宅地の評価での評価額の比較
路線価:300千円(普通住宅地区)
地積㎡:5,000㎡
その他:比較し易くするために整形地として試算
広大地評価の場合
300,000×0.35(※)×5,000㎡=525,000,000円
※0.6-0.05×5,000㎡÷1,000=0.35
地積規模の大きな宅地の評価
300,000×1.00×0.71(※)×5,000㎡=1,065,000,000円
※(5,000×0.80+475)÷5,000×0.8=0.716
0.716→0.71(小数点以下2位未満切捨)
上記の例は広大地評価で最大の減額幅となる5,000㎡を基準に地積規模の大きな宅地の評価と比較しました。改正後の方が、倍以上となっています。
次に、三大都市圏で比較的多い800㎡で試算してみます。
路線価:300千円(普通住宅地区)
地積㎡:800㎡
その他:上記3,000㎡と同じ条件
広大地評価の場合
300,000×0.56(※)×800㎡=134,400,000円
※0.6-0.05×800㎡÷1,000=0.56
地積規模の大きな宅地の評価
300,000×1.00×0.78(※)×800㎡=187,200,000円
※(800×0.95+25)÷800×0.8=0.785
0.785→0.78(小数点以下2位未満切捨)
結果は、改正前と比較して改正後の評価額は約1.4倍となりました。
このように、改正によって適用要件が明確になったものの、改正前の広大地評価によるほどの節税効果はありません。しかしながら、地積規模の大きな宅地の評価の適用をせずに評価すると上記800㎡の例で240,000,000円となり、節税効果は高いこととなります。
面積の広い土地に適用される地積規模の大きな宅地の評価方法を確認し、改正前後における相違点を評価額を中心に比較する形で検討してきました。広い土地を所有されている方は、こうった評価減制度が適用できないか検討しておきましょう。
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