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名古屋相続税相談所

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相続の豆知識
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不動産と相続税

相続税の課税対象には不動産も含まれます。しかし、原則は現金納付であり、不動産で納付する物納はハードルが高いです。そのため、相続税は納税資金(現金預金)が不足するリスクを常に抱えています。

ところが、不動産を用いて生前対策を施すことで、相続税の節税ができます。しかも、生前対策のやり方によっては納税資金の確保にもつながります。そこで、現金納付を除いた納付方法のデメリット、不動産を用いた生前対策の具体例、相続税の節税効果が抜群な小規模宅地等の特例について説明します。

相続税は現金納付が原則

そもそも相続税は相続や遺贈で取得をした現金預金のみならず、不動産、相続開始前3年以内(死亡日の3年前の日から死亡日までの間)の贈与財産、相続時精算課税制度を選択した贈与財産などにも課税されます。

ところが、特に相続財産のうち不動産のウェイトが大きい場合、課税ベースの金額が大きくなり、納税資金(現金預金)が少ないにもかかわらず、相続税が多額になる可能性があります。それでは、納税に困ってしまいます。

確かに相続税の納税資金が不足する場合、延納や物納の選択肢はありますが、いずれの方法にもデメリットがあります。

延納のデメリット

そもそも延納とは、相続税の納税を先延ばしにする制度です。そのため、相続税のほかに借入金利子に相当する利子税を負担し、原則として土地などの担保または保証人が税務署から求められます。

物納のデメリット

そもそも物納とは、現金預金の代わりに不動産など他の相続財産で納付することを指します。物納の条件は現金納付や延納ができない場合に限られ、ハードルが高い納税方法です。

そこで、相続税の納税資金が不足しないための不動産を用いた生前対策が大切となってきます。

不動産を用いた生前対策の具体例

生前対策は2点を意識することがポイントとなります。

  • 被相続人(死亡した人)の財産を減らす
  • 被相続人の相続税評価額(課税ベースの金額)を下げる

配偶者に自宅を贈与する

配偶者に自宅を贈与すれば被相続人の財産を減らすことができます。配偶者への贈与の場合、贈与税の非課税枠は暦年贈与の年110万に加えて、配偶者控除額2,000万円が加算されます。つまり、「110万円+2,000万円=2,110万円」までの贈与が非課税となります。

たとえば、4,000万円の自宅を本人の所有割合が10割とします。その所有割合の5割にあたる2,000万円を配偶者に贈与すれば、非課税枠の2,110万円以内のため、贈与税は課税されません。

しかも、配偶者に自宅を贈与した金額のうち、配偶者控除額の2,000万円までは、たとえ相続開始前3年以内に贈与しても、相続税の計算対象に含まれません。

贈与税の配偶者控除額2,000万円を受けるためには次の条件を全て満たす必要があります。
(1)贈与する対象者が配偶者であること
(2)夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
(3)贈与財産は自分が住むための国内の居住用不動産または国内の居住用不動産を取得するための金銭であること
(4)贈与を受けた年の翌年3月15日までに上記(3)の居住用不動産に贈与を受けた配偶者が現実に住むこと
(5)上記(4)以降も引き続き配偶者が住み続ける見込みがあること
(6)申告すること

ただ、贈与税の配偶者控除額2,000万円は同じ配偶者に対して一生に一度しか利用できないため、慎重に検討しましょう。

子どもに不動産を贈与する

相続時精算課税制度を利用して相続税評価額を下げるのに有効です。相続時精算課税制度とは、税金を先延ばしにする制度です。60歳以上の父母又は祖父母から、贈与時に20歳以上の子どもまたは孫に贈与した場合、一人あたり2,500万円までの非課税枠が利用できます。しかし、その贈与財産は贈与時の相続税評価額が相続財産に加算され、相続税が課税されます。

たとえば、30歳の子どもに贈与時の相続税評価額2,500万円の土地を贈与したとします。仮に相続発生時に土地の相続税評価額(時価の80%)3,000万円に値上がりした場合でも、値上がりする前の相続税評価額2,500万円に対して相続税が課税されます。つまり事実上、相続税評価額を下げたのと同じ節税効果が得られます。

反対に土地の相続税評価額が贈与時の2,500万円より相続発生時の2,000万円に値下がりしたとします。値下がり前の2,500万円に対して相続税が課税されます。つまり事実上、相続税評価額を上げたのと同じ結果になってしまいます。

要するに不動産の時価の値上がりが見込める場合は相続時精算課税制度を利用して、子どもに不動産を贈与することで相続税評価額を下げることが可能です。
とはいえ、この値上がりが確実かどうかの見極めは非常に難しいです。
想定できるケースとしてはリニアモーターカーの駅が開発される近辺に土地を持っているケースとかが当てはまりそうですが、それも確実かどうかと問われると答えに窮してしまいます。

現金預金で不動産を購入する

被相続人の相続財産4,000万円が現金預金の場合、同額(4,000万円)が相続税評価額です。しかし、現金預金の保持者名義で不動産を購入することにより、相続税評価額を下げることができます。

たとえば、現金預金4,000万円で市街地に土地付き建物(内訳は土地2,000万円、建物2,000万円)を購入したとします。そのとき、「住居用として使用する場合」と「賃貸物件(人に貸す)として使用する場合」では相続税評価額が違ってきます。
(1)住居用として使用する場合
土地付き建物の場合、土地と建物では相続税評価額の計算方法が違ってきます。

土地:市街地の場合は路線価方式(厳密にはケースバイケースですが、原則は時価の80%)

建物:固定資産税評価額(専門家によって意見は異なりますが、建築費用の50%~70%)

相続税評価額は次の通りになります。
 土地:2,000万円×80%=1,600万円
 建物:2,000万円×60%(あくまでも割合は一例に過ぎません)=1,200万円
 合計:土地1,600万円+建物1,200万円=2,800万円

住居用として使用する場合、相続税評価額は「現金預金4,000万円-土地付き建物2,800万円=1,200万円」を下げることができます。

(2)賃貸部件として使用する場合
土地付き建物を住居用として使用する場合よりも相続税評価額を下げることができます。特にこのような土地付き建物のうち、土地部分のことを税法上では「貸家建付地」といいます。貸家建付地の相続税評価額の計算方法は次の通りです。

土地(貸家建付地の評価):土地の路線価(時価×80%)×(1-①借地権割合×②借家権割合×賃貸割合)

建物(貸家の評価):固定資産税評価額×(1-②借家権割合×貸付割合)

上記の計算方法に記載されている用語の意味は次の通りです。
① 借地権割合
そもそも借地権とは、借主が借りた土地に建物を建てられる権利のことを指します。借主の権利に相当する分だけ、土地を貸す前より(居住用)も価値が減少すると考えられます。その価値減少の割合のことを借地権割合といいます。借地権割合は地域ごとに国税庁が定めています。たとえば、当事務所の名古屋市中村区名駅4丁目の借地権割合は60%です。
②借家権割合
そもそも借家権とは、建物を貸した場合、借主の権利を意味します。そのため、借主の権利に相当する分だけ、建物を貸す前(居住用)よりも価値が減少すると考えられています。その価値減少の割合のことを借権割合といいます。愛知県の場合、借家権割合は30%です。

当事務所の住所を例にすると、相続税評価額は次の通りになります。なお、貸付割合は100%とします。
 土地:2,000万円×80%-(1-借地権割合60%×借家権割合30%×貸付割合100%)=1,312万円
 建物:2,000万円×60%-(1-借家権割合30%×貸付割合100%)=840万円
 合計:土地1,312万円+建物840万円=2,152万円

賃貸物件として使用する場合、相続税評価額は「現金預金4,000万円-土地付き建物2,152万円=1,848万円」と現金預金のまま持っているよりも半額近く下げることができます。

(3)貸家建付地の特徴と注意点
貸家建付地として居住用よりも相続税評価額を下げるためには、「本当に建物を貸したかどうか」が問われます。具体的には次の通りです。

  • 課税時期前(相続発生日前)に継続的に賃貸されてきたもの
  • 借主の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われきたもの
  • 空室の期間中、他の目的(オフィス用など)で使用されていないこと
  • 空室の期間が一時的な期間であること
  • 課税時期後(相続発生日後)の賃貸が一時的なものではないこと

また、借主の条件は2018年度時点において制限が設けられていません。そのため、借主が親族でも大丈夫です。たとえば、親名義の土地付き建物を子どもに貸すことで、相続税評価額は下げられます。もちろんその場合、賃貸した実績を残すために子どもから家賃を徴収する必要があります。

収益性の低い土地を賃貸物件に転用する

未使用の土地など収益性の低い(≒収入が少ない)場合でも、固定資産税や維持費を負担する必要があります。それを賃貸物件に転用することで、家賃収入を増やすことが可能です。たとえば、現金預金1,000万円、ローン3,000万円で、更地の上に4,000万円の賃貸物件を建てたとします。その場合、相続税の計算で、賃貸物件の相続税評価額からローン残高を控除することができます。要するに収入源(納税資金)を確保しながら、ローン残高の控除を利用して相続税の節税をするスキームです。

ただ、賃貸物件により家賃収入が得られるかどうかは投資した場所や本人次第であり、最悪ローンだけ残り、相続放棄などの検討する状況に追い込まれる可能性があります。

家賃収入が増える場合は不動産管理会社を利用する

生前対策で賃貸物件に投資をし、家賃収入が増えると投資した本人に対して所得税(不動産所得)が課税されます。しかも所得税は所得金額に比例して税率(5%~45%までの7段階)が高くなります。家賃収入による所得税の増税を防止するために、不動産管理会社(法人)を利用する方法があります。
具体的には、不動産管理会社が賃貸物件を借り上げて、入居者へ転貸しをします。それによって、家賃収入を不動産管理会社と本人を含めた親族に分散できます。たとえば、本人と親族を不動産管理会社の役員にして、家賃収入の一部を役員報酬として支給することが可能です。所得金額を分散すれば、所得税の税率は下がり、節税につながります。

不動産の相続税評価額を大幅に減らす「小規模宅地等の特例」とは

上記の相続税評価額は原則的な計算方法でした。しかし、小規模宅地等の特例という優遇税制を利用することで、相続税評価額を大幅に減らすことができます。そのため、相続税の生前対策に欠かせない優遇税制です。

小規模宅地等の特例のアウトライン

一定の面積以下の場合、原則的に計算した相続税評価額から50%または80%を減らす優遇税制です。具体的には次の通りです。

  • 被相続人の居住用住宅:330㎡まで80%減
  • 被相続人の賃貸物件:200㎡まで50%減

たとえば、300㎡の固定資産税評価額2,400万円の居住用住宅の建物を相続するとします。相続税評価額は原則的な2,400万円から「2,400万円×(1-80%)=480万円」までの80%を減額することができます。

利用できるおもな条件

相続税の申告をすることが大前提に小規模宅地等の特例の利用できる条件は次の通りです。
(1)居住用住宅の場合
次の対象となる相続人と保有要件は次の通りです。
①配偶者
無条件で利用できる
②同居親族
相続税の申告期限(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内)まで引き続き住んでいること
③ 別居親族
相続人に持ち家がないことを前提に、次の条件を全て満たす必要があります。

  • 被相続人の配偶者、同居親族がいないこと
  • 相続開始時で、過去に持ち家のないこと(例 子どもに持ち家を贈与し、実家を相続する場合)
  • 相続開始前3年以内に3親等以内の親族またはその家族経営する会社名義の建物に住んでいないこと

④ 保有要件
①~③までの相続人が相続税の申告期限まで引き続き居住用住宅に保有していること

(2)賃貸物件
次の全てを満たす必要があります。

  • 相続税の申告期限までに賃貸事業を営み、保有していること
  • 相続開始前3年以内に賃貸事業を開始した賃貸物件(事業的規模(※)の賃貸事業は含まれません)

※事業的規模とは、おおむね独立家屋は5棟、アパートやマンションなどは10室のことをいいます。

小規模宅地等の特例が利用できない不動産

次の条件を満たす不動産については小規模宅地等の特例を利用して相続税評価額を減らすことはできません。

  • 相続人が被相続人から相続開始前3年以内に贈与により取得をした不動産
  • 相続人が被相続人から相続時精算課税に係る贈与により取得をした不動産

まとめ

生前対策は余裕をもって行うことが求められます。たとえば、賃貸物件の相続で小規模宅地等の特例を利用して相続税評価額を減らすためには、賃貸実績は3年以上が必要となります。そのため、相続発生間際で賃貸物件を購入し、生前対策を施しても相続税の節税効果はあまり得られないでしょう。しかも、相続はいつ発生するのかを予測することは難しいです。だからこそ、特に不動産は余裕をもって生前対策を行いことが大切なのです。
生前対策を詳しく知りたい方はご相談ください。

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